<三木市>議事録の不開示決定について、取消と損害賠償の請求を認容―神戸地裁

神戸地裁、三木市職員倫理審査会の議事録の不開示決定について、取消と損害賠償を求めた市議の訴えを認める

兵庫県三木市幹部慰労会に市の工事を受注する建設会社社長らが同席した問題に関連して、神戸地裁は、三木市職員倫理審査会の議事録の不開示決定の取消と損害賠償を認める判決を下した。

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2017/11/7神戸新聞三木市幹部慰労問題 前市長「認識欠落していた」

神戸地裁平成29年9月14日判決

前提事実

当事者等

被告は,普通地方公共団体であり,原告は,平成27年11月以前から現在まで,被告の市議会議員の地位にある者である。

Aは,平成27年11月当時から平成29年5月に辞職するまでの間,普通地方公共団体である被告の市長だった者である。

Bは,平成28年1月1日以降,被告の副市長(最高情報セキュリティ責任者)となり,平成29年5月にAが市長を辞職した後から同年7月2日まで,市長の職務を代理し,被告の代表者たる地位にあった者である(地方自治法152条1項本文参照)。

三木市職員倫理審査会の開催及びその概要

ア 被告の市長(A),副市長,教育長及び部長級の幹部職員らは,平成27年11月18日に開催された被告の幹部慰労会の2次会(「本件慰労会」)に参加した。

イ 被告は,平成28年1月,三木市職員倫理条例に基づき,三木市職員倫理審査会(「本件審査会」)を組織した。

本件審査会は,被告の幹部職員が被告から公共工事を受注していた建設工事会社社長ら2名と本件慰労会で飲食を共にしたこと(「本件飲食行為」)が,同条例に抵触するか否かを審議・調査することを目的とし,同月6日(第1回),同月16日(第2回),同月28日(第3回)及び同年2月3日(第4回)に開催され,本件慰労会の前に,被告の幹部職員らに対し,本件慰労会の参加者を知らせるメール(「本件メール」)があったかどうかなどが審議された。

本件公開請求

原告は,平成28年2月23日付けで,三木市長に対し,本件条例5条に基づき,本件審査会の議事録(「本件議事録」)の公開を請求(本件公開請求)した。

本件決定

ア 処分行政庁は,平成28年3月8日付け公文書非公開決定通知書(以下「本件通知書」という。)により,本件公開請求について,本件議事録の公開を行わない旨の決定(以下「本件決定」という。)をし,その頃,原告に通知した(甲2及び弁論の全趣旨。なお,本件通知書の作成名義は,三木市職員倫理審査会委員長となっているが,公開決定等を行う権限は実施機関である市長が有する(本件条例7条1項,2条2号)ので,本件決定の主体は処分行政庁と認める。)。
イ 本件通知書には,「公文書の公開を行わない理由」欄に「公文書の公開を行わない理由そのものが情報公開できない項目に該当するため」との記載があり,「上記の理由が消滅する時期」欄に斜線が引かれている。

被告の議事録の送付

被告は,平成28年5月18日頃,原告に対し,本件各議事録のうち,本件審査会が関係人に対して意見聴取を行った部分並びに三木市の職員の氏名及び民間企業に属する者の役職及び個人名に係る部分等をマスキングした上,その写しを情報提供として交付(「本件任意交付」)した。

原告の訴えの提起

原告は,平成28年6月21日,本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。

当裁判所の判断

認定事実

掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

本件飲食行為及びその後の被告の対応等の概要

ア 本件飲食行為の翌日である平成27年11月19日午前1時20分頃,本件慰労会の出席者であった被告の理事が,酒気帯び運転の被疑事実で逮捕された。
イ Aは,平成27年12月4日,神戸新聞社の取材に対し,本件飲食行為につき,自身と副市長以外の職員は知らずにたまたま利害関係者と同席しただけであり,三木市職員倫理条例等の規則には違反しないと述べ,同月8日,記者会見を開いて同様の説明をした。
ウ 被告は,平成28年1月3日,三木市内約3万世帯に,本件飲食行為等に関する説明文書(甲13)を配布した。同文書には,本件慰労会に参加した被告の部長等は,民間の利害関係者が参加することを知らされていなかったから,三木市職員倫理条例等に抵触するものではない旨の説明と,市長・副市長・教育長の三者についても,本件慰労会において,市長等の権限・地位を利用した不当な金品の授受や,特定の者のみに対する有利・不利な取り扱いをしなかったことから,三木市市長等倫理条例には違反しない旨の見解が記載されている。
エ 平成28年1月6日,第1回本件審査会が開催された。
オ 平成28年1月16日までに,被告の秘書課が,本件慰労会の出席予定者の姓を記載したメール(本件メール)を,本件飲食行為の7日前に被告の部長らに送信していたことが判明し,同月28日開催の第3回本件審査会において,同部長らに対する意見聴取が行われた。
カ 本件審査会は,平成28年2月3日の第4回審査会において,本件飲食行為が三木市職員倫理条例施行規則に抵触すると判断した。
キ Aは,平成28年2月9日,本件飲食行為について,自身に責任があることを認める記者会見をした。
ク 平成28年2月19日,処分行政庁は,神戸新聞社が同月5日にした本件議事録に係る情報公開請求について,個人情報部分をマスキングした上で公開する決定をし,同月19日,その写しを交付した。その後,処分行政庁が原告を含む市議2名に対しては本件議事録を公開しない旨の決定(本件決定を含む。)をしたことについて,Bは,「神戸新聞社に公開後1週間ぐらいしてから,情報公開条例に基づき,公開できない事情が発生した。」と説明した。
ケ Aは,平成29年5月15日開催の被告市議会において謝罪し,市長の職を辞することを表明した。

本件不正アクセスに係る事情

ア Bは,副市長(最高情報セキュリティ責任者)であった平成28年1月,被告の庁内において,不正アクセスを疑わせる記録が発見され,また,読売新聞社の記者から,外部の者が入手できないはずである本件メールに関する質問を受けるなどしたことから,同年2月22日,本件不正アクセスについて,三木警察署に被害届を提出した(乙13及び被告代表者B)。
イ Bは,上記アの1日後か2日後,当時警察との連絡調整を担当していたC副市長から,不正アクセスに関する情報公開はできるだけ控えるよう警察官から要請されていると聞いた(乙13及び被告代表者B)。
ウ 三木警察署の警察官は,平成28年5月17日,本件不正アクセスに関し,被告の三木市総合保健福祉センターにおいて捜索差押えを行い,被告職員の職員証,ノートパソコン等を押収した(乙4)。

本件取消しの訴えについて

本案前の争点(本件任意交付による訴えの利益の消長)について

ア 処分の取消しの訴え(行政事件訴訟法3条2項)は,行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為について,その効果の排除を求める訴えであると解される。

イ 被告は,本件任意交付により,原告に対して本件議事録の一部が公開されたことから,訴えの利益が消滅したと主張する。しかし,本件任意交付は,情報提供として事実上されたものに過ぎず,権限のある行政庁による撤回等によって本件決定の法律上の効果が失効したとは認められない。

ウ したがって,原告は,本件訴えにより,本件決定を取り消し,その効果の排除を求める利益を有するというべきである。

理由付記の違法の有無について

ア 一般に,法令が行政処分に理由を付記すべきものとしている場合に,どの程度の記載をすべきかは,処分の性質と理由付記を命じた各規律の規定の趣旨・目的に照らしてこれを決定すべきである(最高裁昭和38年5月31日第2小法廷判決・民集17巻4号617頁)。本件条例7条4項前段が,実施機関が公文書の公開を行わない旨の決定を行ったときは,その理由を明らかにしなければならないと規定し,公文書の非開示決定通知書にその理由を付記すべきものとしているのは,同条例に基づく公文書の開示請求制度が,市民と市政との信頼関係を強化し,地方自治の本旨に即した市政を推進することを目的とするものであって,実施機関においては,公文書の開示を請求する市民の権利を十分に尊重すべきものとされていること(本件条例1条,3条参照)にかんがみ,非開示理由の有無について実施機関の判断の慎重と公正妥当を担保してそのし意を抑制するとともに,非開示の理由を開示請求者に知らせることによって,その不服申立てに便宜を与える趣旨に出たものというべきである。このような理由付記制度の趣旨にかんがみれば,公文書の非開示決定通知書に付記すべき理由としては,開示請求者において,本件条例8条各号所定の非開示事由のどれに該当するのかをその根拠とともに了知し得るものでなければならず,たとえば,非開示の根拠規定を示したとしても,当該公文書の種類,性質等とあいまって開示請求者がそれらを当然知り得るような場合は別として,本件条例7条4項の要求する理由付記としては十分ではないといわなければならない(最高裁平成4年12月10日第1小法廷判決・裁判集民事166号773頁参照)。

イ 本件通知書には,「公文書の公開を行わない理由」欄に「公文書の公開を行わない理由そのものが情報公開できない項目に該当するため」との記載があり,「上記の理由が消滅する時期」欄に斜線が引かれている。しかし,このような記載のみでは,開示請求者である原告にとって,本件決定が,本件条例8条各号所定の非開示事由のどれに該当するのかをその根拠とともに了知することはおよそ不可能というほかなく,本件通知書の上記記載は,本件条例7条4項の要求する理由付記として,不十分なものといわざるをえない。

ウ 被告は,本件条例10条が,公文書の存否を明らかにしないで公開請求を拒否することができる場合もあると定めていることからすれば,不開示の理由を明らかにしないで公開請求を拒否することが許されると主張する。しかし,上記アで述べたことからすれば,本件条例10条のように,公文書の存否を明らかにしないで公開請求を拒否(いわゆるグローマー拒否)できる場合であっても,当該決定書には,必要かつ十分な拒否理由を付記すべきと解するのが相当である。本件条例10条があるから不開示の理由を明らかにしないことが許される場合があるとの被告の主張は,独自の見解といわざるを得ず,採用することができない。

エ したがって,本件決定の通知書(本件通知書)は,本件条例7条4項の定める理由付記の要件を欠くものというほかはない。

本件条例8条3号該当性について

ア 本件条例8条3号は,公にすることにより,人の生命,身体,財産等の保護又は犯罪の予防その他の公共の安全と秩序の維持に支障を生じると認められる情報を,非公開情報として,公文書公開請求の対象から除外する旨規定する。同条1号本文が「おそれがある」と規定するのに対し,同条3号が「生じると認められる」と規定し,文言を使い分けていることからすれば,同条3号は,公開により,所定の事由が現実に生じると認められる場合を指し,そのおそれがあるのみでは足りないというべきである。

イ 被告は,本件公開請求当時,被告の庁内において,本件不正アクセスが発覚し,警察による捜査が行われていたのであり,本件議事録を公開すれば,後日,本件飲食行為に関する情報が第三者に知れた場合,その情報が本件不正アクセスによって得られた情報なのか,本件公開請求によって得られた情報なのか,流出源が特定できなくなるおそれがあったと主張する。しかし,そのようなおそれがあるのみでは本条3号に該当するとはいえないし,本件議事録を原告に公開することにより,本件議事録に係る情報の流出源が特定できなくなって警察による捜査が混乱する事態が,現実に生じると認めるに足りる証拠はない。

ウ したがって,本件議事録を公開することにより,本件条例8条3号所定の事由が生じると認められるとはいえないから,本件議事録に含まれる情報が同号に該当するとは認められない。

本件決定は,理由付記の要件を欠く違法があり,また,本件決定の実質的な理由も本件条例8条3号に該当するものとは認められない違法がある。よって,これらを理由として本件決定の取消しを求める原告の本件取消しの訴えは,理由があるので,認容すべきである。

国家賠償請求の是非について

本件条例3条が,市民の公文書の公開を請求する権利が十分に保障されるようこの条例を解釈,運用するとともに,個人に関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならないと規定すること,上アで述べた本件条例の理由付記の要件の趣旨からすれば,実施機関である処分行政庁には,公文書の公開を行わない旨の決定をする場合には,市民の公文書の公開を請求する権利が十分保障されるよう,本件条例所定の非公開情報への該当性及びその程度並びにより制限的でない他に選びうる手段の存否を検討した上で,同決定を行うべき職務上の注意義務を負うと解するのが相当である。

本件決定の実質的な理由も,条例所定の事由に該当するものとは認められない。また,処分行政庁が,本件決定をするに当たり,被告が主張する警察による捜査の混乱の具体的な程度及びこれを防止し得るより制限的でない措置の存否ついて検討した形跡は,見当たらない。そして,原告は,地方公共団体である被告の市議会議員として,地方自治の本旨に基づいて,被告における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに,被告の健全な発達に寄与すべく,市政に関する調査をし,問題があればこれを正すよう政務活動をすべき権利と責務を負う(地方自治法1条,100条参照)ところ,本件決定により,被告市民としての知る権利ないし公文書の公開を請求する権利のみならず,市議会議員としての上記調査・政務活動をする権利をも侵害されたものというべきである。

したがって,処分行政庁は,上記職務上の注意義務を怠り,本件決定をし,原告の上記各権利を侵害したというべきであるから,本件決定は,国家賠償法上,違法というべきところ,本件決定によって原告が被った精神的苦痛を慰謝するためには,10万円が相当というべきである。

よって,原告は,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づく国家賠償として,慰謝料10万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成28年7月16日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。

神戸地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官 山口浩司
裁判官 武村重樹
裁判官 毛受裕介



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