森友学園問題 会計検査院報告書要旨版(全文)Part.3

会計検査院は、平成29年11月22日、国会法第105条の規定による検査要請を受諾した下記の事項について、会計検査院法第30条の3の規定により、検査の結果を報告した。

「学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関する会計検査の結果について」


【目次と当サイトでのページ分け】

1 検査の背景及び実施状況
2 検査の結果
(1) 大阪府豊中市の国有地の貸付及び売却の経緯
(2) 貸付価格及び売却価格並びに価格算定手続の適正性
(3) 当該国有地の貸付及び売却に関する行政文書の管理状況
3 検査の結果に対する所見

Part.1 → 1
Part.2 → 2のうち(1)
Part.3 → 2のうち(2)
Part.4 → 2のうち(3)
Part.5 → 3


学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関する会計検査の結果についての報告書(要旨)

平 成 2 9 年 1 1 月

会 計 検 査 院

2.検査の結果

(2) 貸付価格及び売却価格並びに価格算定手続の適正性

ア 貸付料の算定

(ア) 貸付料予定価格の決定

近畿財務局は、本件土地の貸付料予定価格の決定を2回行っている。1回目は、10年間の定期借地を前提とした鑑定評価書による賃料42,043,000円/年から公租公課相当額9,184,403円/年を控除した32,858,597円/年を貸付料予定価格としていた。しかし、27年3月26日に森友学園から本件土地が地耐力の劣る地盤であることを示すボーリング調査結果が提出されたことなどの理由から、同年4月16日に軟弱地盤及び50年の定期借地を前提とする価格等調査業務を委託し、これによる賃料36,040,000円/年から公租公課相当額8,871,294円/年を控除するなどして、2回目は、27,251,706円/年を貸付料予定価格としていた。

(イ) 見積合わせ

近畿財務局は、貸付合意書締結に係る見積合わせを27年4月28日に行い、1日に8回の見積合わせを行って、27,300,000円/年の貸付価格としていた。

イ 有益費

(ア) 大阪航空局における対策工事の内容及び金額の妥当性の検証

大阪航空局は、28年2月25日に近畿財務局から貸付合意書第6条第2項に基づき国が森友学園に返還する有益費に関して意見の照会を受け、対策工事の内容及び金額の妥当性の検証を行っていた。大阪航空局は、28年2月に近畿財務局を通じ、対策工事を実施した業者(以下「対策工事業者」という。)から実施平面図、工事写真、産業廃棄物管理票、契約内訳書等の書類の提供を受けて、施工範囲、地下埋設物の撤去及び処分状況、土壌汚染対策の実施状況等を確認し、対策工事の内容は土地の価格を向上させる内容であるとしていた。また、大阪航空局は、対策費用として森友学園が支出したとする計131,760,000円の妥当性の検証に当たっては、対策工事業者以外の2者から見積金額を徴取し、2者の見積金額がいずれも対策費用を上回っていることを確認していた。

そして、大阪航空局は、貸付料の算定の根拠となった鑑定評価書に基づき、対策工事前の土地の評価額(以下「対策前評価額」という。)923,658,000円と対策工事後の土地の評価額(以下「対策後評価額」という。)1,055,609,000円との差額131,951,000円を対策工事による本件土地の価値の増加額としていた。

上記により、大阪航空局は、森友学園が対策費用として支出したとする131,760,000円について、工事内容は本件土地の価格を向上させる内容であること、対策費用は、2者から徴取した見積金額よりも安価であり妥当であること、また、本件土地の価値の増加額より安価であったことから、対策費用131,760,000円を有益費とするとしていた。そして、大阪航空局は、28年3月8日に「有益費支払いに関する意見について(回答)」において、対策工事の内容及び金額が妥当であること並びに対策費用131,760,000円を有益費とすることを近畿財務局へ回答していた。

(イ) 有益費についての検討

対策費用として森友学園が支出したとする131,760,000円について、近畿財務局及び大阪航空局から提出を受けた資料等を確認したり、森友学園から対策工事業者に支払われた実際の金額について確認したりしたところ、森友学園からの支払完了後、森友学園から返金要求があったため、対策工事業者は、27年12月3日の森友学園からの返金請求書に基づき、同月9日に21,060,000円を森友学園へ返金していた。

したがって、森友学園が対策工事で実際に支出した額は、131,760,000円から上記21,060,000円を差し引いた110,700,000円となっていた。このため、森友学園は、実際に支出した額より21,060,000円過大であった131,760,000円を、対策工事で支出した費用であると偽って国に報告していたことになる。

さらに、対策工事後の個別的要因のうち地盤改良について、大阪航空局は、整地により改善されたとして1.00としていた。しかし、対策工事の報告書等を確認したところ、対策工事では地表面の整地しか行われておらず、地盤の地耐力を改善させるような工事を実施したことは確認できなかったことから、対策工事後の地盤改良に係る個別的要因を1.00に改善したとして評価していることについては、十分な根拠が確認できないものとなっている。地盤改良に係る個別的要因を対策工事前から変更せずに0.97として対策後評価額を試算すると、本件土地の価値の増加額は105,561,000円となる。

また、対策前評価額923,658,000円については、大阪航空局において、貸付料の根拠となった鑑定評価書に準じて、標準的画地の価格に個別的要因の相乗として0.69を乗ずるなどして算定していたものであった。そして、大阪航空局は、対策費用として森友学園が支出したとする131,760,000円の契約内訳書等から、土壌汚染対策に係る費用を45,056,120円、地下埋設物の撤去に係る費用を86,703,880円とそれぞれ算定し、これらの費用を基に、土壌汚染の個別的要因を0.96から0.97へ、地下埋設物の個別的要因を0.95から0.93へ変更し、個別的要因の相乗を0.69としたとしている。

しかし、前記のとおり、対策工事において森友学園が支出した額は実際には110,700,000円となることから、これにより土壌汚染及び地下埋設物の個別的要因を算定するとそれぞれ0.97及び0.95となる。

大阪航空局は、森友学園が支出したとする額を用いて地下埋設物の撤去に係る費用を86,703,880円と算出しているが、この対策工事では、廃棄物混合土はほとんど撤去されていなかったと考えられる。

しかし、廃棄物混合土の撤去・処分に係る費用を正確に算定するには、算定に必要な情報を把握して条件を全て確定する必要があるが、このことは困難であるため、仮に大阪航空局の算定方法に沿って、森友学園が実際に支出した対策費用に基づき対策工事前の個別的要因を算定するとともに、前記のとおり対策後評価額を個別的要因のうち地盤改良について対策工事前から変更せずに0.97として試算すると、本件土地の価値の増加額は79,171,000円となる。

これらのことから、対策費用として認められる額は110,700,000円となり、また、本件土地の価値の増加額を大阪航空局の算定方法に沿って試算したところ、地盤改良に係る個別的要因が改善されていない点を反映すると105,561,000円、これに加えて対策費用を森友学園が実際に支出した110,700,000円とすると79,171,000円となる。このため、大阪航空局が有益費として森友学園に支払った131,760,000円は、これらに比べて26,199,000円から52,589,000円が多く支払われていることになる。

以上のことから、国が森友学園へ返還する有益費の額の算定に当たり、対策工事の内容が土地の価値を増加させるものとなっているかなどの確認を十分に行うとともに、本件土地の価値の増加額の妥当性について十分な検討を行うなどする必要があったと認められる。

これについて、国土交通省は、貸付財産価格の増加額を算定する基準等を定めた規定はないとされていること、一般的には土壌汚染・地下埋設物による減価額と工事実費とが一致するようにすることなどから、大阪航空局が行った本件土地の価値の増加額の算定については、本来これを行う必要はなく、工事実費を有益費とすべきであったことから、工事実費を有益費として支払ったこと自体は不適切ではないとしている。

なお、財務省及び国土交通省は、貸付合意書第6条第2項については、仮に森友学園側から工事実費を超えた土地の価値の増加額の請求がなされるなどした場合に備え、国側に適正な支払額を決定する権利を明示的に付与しておくためであるとしている。

ウ 売却価格の算定

(ア) 地下埋設物の取扱い

森友学園から連絡を受けた近畿財務局は、大阪航空局とともに、28年3月14日に現地の確認をして、今回確認した廃棄物混合土は貸付合意書で対象としていた地下埋設物に該当しない新たな地下埋設物であると判断したとしている。そして、近畿財務局は、大阪航空局に地下埋設物の撤去・処分費用の見積りを口頭により依頼し、その額を本件土地の評価において反映させることとした。また、本件土地に関する隠れた瑕疵も含む一切の瑕疵について国の瑕疵担保責任を免除し、森友学園は売買契約締結後、損害賠償請求等を行わないとする特約条項を契約に加えることとした。一方、大阪航空局は、同月30日に近畿財務局から地下埋設物の撤去・処分費用の見積りを行うよう口頭による依頼を受けて、地下埋設物撤去・

処分概算額を8億1974万余円と算定し、近畿財務局へ提出した。

(イ) 地下埋設物撤去・処分費用の算定

地下埋設物撤去・処分費用の算定における対象面積についてみると、杭工事においていずれの杭から廃棄物混合土が確認されたかを特定することができないことや、過去に池等であった土地の地歴等を勘案しているとする範囲と本件土地のうち北側の計5,190㎡(以下「北側区画」という。)とが一致しているかを確認することができないことから、対象面積の範囲を妥当とする確証は得られなかった。

杭部分を除く部分に設定された深度3.8mについてみると、大阪航空局が確認したとしている工事写真には3.8mを正確に指し示していることを確認することができる状況は写っていない。また、近畿財務局及び大阪航空局の職員が現地で確認した際等に、別途、廃棄物混合土の深度を計測した記録はないことも踏まえると、廃棄物混合土を3.8mの深度において確認したとしていることの裏付けは確認することができなかった。そして、ボーリング調査等を実施した箇所付近において、深度3.8mに廃棄物混合土が確認されていないのに、大阪航空局が森友学園小学校新築工事において工事関係者が北側区画で試掘した5か所のうち1か所の試掘において深度3.8mに廃棄物混合土が確認された結果をもって敷地面積4,887㎡に対して深度3.8mを一律に適用して処分量を算定しているのは、過去の調査等において

廃棄物混合土が確認されていなかったとの調査結果と整合しておらず、この算定方法は十分な根拠が確認できないものとなっている。

杭部分に関し、深度9.9mまで廃棄物混合土の存在を見込んでいることについては、森友学園が行った対策工事において廃棄物混合土は撤去されていないため、近畿財務局及び大阪航空局が現地や施工写真等で確認したとしている廃棄物混合土が既知の地下3m程度までの深度のものなのか、杭先端部の地下9.9mの深度のものなのかなどについては確認することができなかった。

そして、杭工事において新たに確認されたとする廃棄物混合土は、(仮称)M学園小学校新築工事地盤調査報告書等においておおむね地下3m以深は沖積層等が分布しているとされていることなどから、既知の地下3m程度までに存在するものであることも考えられ、新たに確認されたとする廃棄物混合土がどの程度の深度に埋まっていたかについては、十分な確認を行う必要があったと認められる。

以上のように、深度3.8mについて、廃棄物混合土を確認していることの妥当性を確認することができず、敷地面積4,887㎡に対して一律の深度として用いたことについて十分な根拠が確認できないこと及び深度9.9mを用いる根拠について確認することができないこと、また、大阪航空局は、廃棄物混合土が確認されていない箇所についても地下埋設物が存在すると見込んでいることとなることなどから、地下埋設物撤去・処分概算額の算定に用いた廃棄物混合土の深度については、十分な根拠が確認できないものとなっている。

また、21年度の地下構造物調査時の試掘箇所における掘削土量に占める廃棄物混合土の割合(以下「混入率」という。)の47.1%は、地下構造物調査において北側区画内で試掘した42か所のうち廃棄物混合土の層が存在すると判断された28か所の混入率を平均して算定されているが、28か所以外の14か所についても北側区画での試掘であり、うち13か所では廃棄物混合土が確認されていない。このため、14か所を混入率の平均の算定から除外していることに合理性はなく、混入率の平均値が試掘した42か所の平均より高めに算定されていることも考えられる。

このように、対象面積全体に乗じる平均混入率として、廃棄物混合土が確認された箇所に限定した混入率の平均値を用いていることについては、十分な根拠が確認できないものとなっている。

さらに、本件土地の地下埋設物撤去・処分費用の算定における処分費(以下「本件処分費」という。)の単価22,500円/tがどのような条件下で提示された単価であるのかなどを示す資料はなく、単価がどのような項目から構成されているかなど、単価の詳細な内容について確認することができなかった。

一方、27年6月から実施された対策工事で汚染されていない土壌に入れ替えるなどして掘削除去されている土壌は地下埋設物の撤去・処分費用の算定における北側区画の範囲内であり、その土壌は、処分量として算定された計19,520tの一部と重複していることから、処分量から控除する必要があったと認められる。

共通仮設費、現場管理費及び一般管理費等の算定に当たっては、直接工事費に事業損失防止施設費等を加えた額(以下「共通仮設費対象額」という。)に事業損失防止施設費(注5)に相当する費用を加えているが、国土交通省制定の「空港土木請負工事積算基準」(以下「工事積算基準」という。)によれば、共通仮設費対象額に事業損失防止施設費に相当する費用として直接工事費の3%を乗じて加えることとはされていないことから、直接工事費に3%を乗じた事業損失防止施設費に相当する費用を共通仮設費対象額に加える必要性があるとは認められない。

また、共通仮設費対象額に本件処分費全額が含まれているが、工事積算基準では、処分費の共通仮設費対象額等に占める割合が3%を超える場合は、3%を超える処分費の金額は共通仮設費対象額に算入しないこととなっていることを踏まえると、仮に本件処分費から処分に係る労務費等を区分することができた場合には、その額を共通仮設費対象額にそのまま加えることは可能であると認められるとしても、外注が必要となる処分費について共通仮設費対象額等の3%を超える金額を共通仮設費対象額に含める必要があるとは認められない。

地下構造物調査報告書等の既存のデータのみを用いて処分量を求めるためには、何らかの仮定に立って推計せざるを得ない。そして、仮定の仕方によって処分量の推計値が変動すると考えられるが、例えば、限られた期間で見積りを行わなければならないという当時の制約された状況を勘案し、大阪航空局が適用した地下埋設物撤去・処分費用の価格構成や工事積算基準等を用いた上で、算定要素ごとに一定の条件を設けて混入率法として試算を行ったところ、処分量19,520tは、①廃棄物混合土の深度を過去の調査等において試掘した最大深度の平均値に修正した場合は9,344t、②混入率を北側区画の全試掘箇所42か所の混入率の平均値に修正した場合は13,120t、③処分量に含まれていた対策工事で掘削除去している土壌の量を控除した場合は19,108t、これらの①~③の算定要素が全て組み合わされた場合は6,196tと算出された。

一方、上記の混入率法を用いずに、廃棄物混合土が確認された最大深度の平均値2.0mと最小深度の平均値0.6mの差となる1.4mの範囲全てに、廃棄物混合土が存在する層があるとみなして算定する層厚法も考えられる。

層厚法により、地下構造物調査等を行った位置が対象面積に対して偏っていないと仮定した上で、更に廃棄物混合土が存在する層の全てが廃棄物混合土のみであるとみなして、対策工事で掘削除去している土壌の量を控除して機械的に試算を行ったところ、処分量は13,927tと算出された。

このように、処分量を求めるための仮定の仕方によって、処分量の推計値は大きく変動する状況となっており、また、いずれも大阪航空局が算定した処分量19,520tとは大きく異なるものとなっていた。

以上のように、大阪航空局が算定した本件土地における処分量19,520t及び地下埋設物撤去・処分概算額8億1974万余円は、算定に用いている深度、混入率について十分な根拠が確認できないものとなっていたり、本件処分費の単価の詳細な内容等を確認することができなかったりなどしており、既存資料だけでは地下埋設物の範囲について十分に精緻に見積もることができず、また、仮定の仕方によっては処分量の推計値は大きく変動する状況にあることなどを踏まえると、大阪航空局において、地下埋設物撤去・処分概算額を算定する際に必要とされる慎重な調査検討を欠いていたと認められる。

(注5) 事業損失防止施設費 工事の施工に伴って発生する騒音、振動等に起因する事業損失を未然に防止するための仮施設の設置費、撤去費等に要する費用をいう。

(ウ) 予定価格の決定等

近畿財務局は、大阪航空局から売払処分依頼を受けて、不動産鑑定評価基準(平成14年7月3日国土交通事務次官通知)に基づく正常価格(注6)を求めることとし、大阪航空局からの依頼文書で示された地下埋設物撤去・処分概算額及び軟弱地盤対策費を考慮して不動産鑑定評価を行うことを条件とした仕様書により鑑定評価業務を発注した。委託を受けた不動産鑑定業者の不動産鑑定士は、近畿財務局が考慮することを依頼した地下埋設物撤去・処分概算額について、不動産鑑定評価基準における「他の専門家が行った調査結果等」としては活用できなかったとし、

近畿財務局の同意を得て、地下埋設物の存在を不動産の価格を形成する要因(以下「価格形成要因」という。)から除外する想定上の条件を設定して鑑定評価を行い、本件土地の鑑定評価額を9億5600万円とした。さらに、近畿財務局が提示した地下埋設物撤去・処分費用を控除し、更に地下埋設物の撤去に要する期間に起因する宅地開発事業期間の長期化に伴って発生する逸失利益相応の減価を講じて意見価額を1億3400万円であると付記していた。

当該意見価額について、上記の不動産鑑定士は、不動産鑑定評価基準において、想定上の条件が設定された場合に、「必要があると認められるときは、当該条件が設定されない場合の価格等の参考事項を記載すべきである」とされていることによるものであるなどとしている。そして、参考事項として記載された意見価額は、鑑定評価額を定める場合のように中立性や信頼性の水準を確保することが求められるものではない。また、地下埋設物撤去・処分概算額を活用できなかった理由は鑑定評価書に記載されていないが、上記の不動産鑑定士に確認したところ、依頼者側の推測に基づくものが含まれていて、調査方法が不動産鑑定評価においては不適当であることなどから、他の専門家が行った調査結果等としては活用できなかったとするとともに、不動産鑑定評価上、地下埋設物を全て撤去することが合理的であることを保証したものではないとしている。また、軟弱地盤対策費5億8492万余円の算定根拠について大阪航空局に確認したところ、大阪航空局は、近畿財務局からの依頼に基づき、森友学園側の工事関係者から提供された見積書を内容の検証を行わないまま近畿財務局に提出したとしている。そして、近畿財務局は、当該見積書が契約相手方である森友学園側の工事関係者から提供されたものであることを知りながら、その事実を説明せず、また、内容を十分に確認しないまま、不動産鑑定士に判断を委ねることとして、これを考慮することを条件とした鑑定評価業務を委託していた。このようなことから、両局において、予定価格の決定に関連した事務の適正な実施に対する配慮が十分とはいえない状況となっていた。

そして、近畿財務局は、9億5600万円が鑑定評価額であること、地下埋設物撤去・処分概算額を反映した場合の意見価額が1億3400万円であることの審査を了したが、評価調書の作成を失念したとし、「国有財産評価基準について」(平成13年財理第1317号。以下「国有財産評価基準」という。)の手続に従って評価が行われた適正な対価(以下「評定価格」という。)を定めないまま、1億3400万円を予定価格として決定していた。

予定価格と意見価額が同額である点に関して、近畿財務局は、本件鑑定評価において、地下埋設物の存在が価格形成要因から除外されたことから、地下埋設物の影響を踏まえた判断が必要になるとし、近畿財務局が明らかとなっている瑕疵に対応しない場合には森友学園が小学校建設を断念して損害賠償を請求する考えが示されていたことなどの個別事情を踏まえ、意見価額を参考として、鑑定評価額9億5600万円から大阪航空局が合理的に見積もった地下埋設物撤去・処分費用を控除するなどしたものであるとし、国有財産評価基準に沿った取扱いであるとしている。

しかし、予定価格の決定に当たり、森友学園から損害賠償を請求する考えが示されていたことなどの個別事情を踏まえたとされているところ、当該個別事情を勘案したことは予定価格の決定における重要な要素であるのに、決裁文書にこの点に関する特段の記述がないなど、具体的な検討内容は明らかではなかった。そして、鑑定評価額と大きく異なる額を予定価格として決定していたのに、国有財産評価基準で求められている評価調書の作成を失念し、評定価格を定めておらず、評価内容が明らかになっていないため、評価事務の適正を欠いていると認められた。

また、3財務局及び6財務事務所等が、27、28両年度に特約条項を付して地下埋設物等の瑕疵等明示売却を行った167契約についてみたところ、本件のように意見価額が付記されていた事例はなく、また、地下埋設物等の存在は、価格形成に影響がないと判断されるものなどを除き、不動産鑑定評価において減価要因とされており、鑑定評価額から、別途に財務局及び財務事務所等が地下埋設物等の撤去費用等を控除していた事例は見受けられなかった。なお、財務本省は、把握している範囲で鑑定評価額から土壌汚染対策費及び地下埋設物撤去費用を別途控除していた事例が、22年度に1件あるとしている。

さらに、近畿財務局は、有益費の返還に係る地下埋設物撤去工事を行った実績等がある森友学園に対して、地下埋設物撤去・処分費用の見積りを短期間で行うのは難しいと考えられたとして見積合わせを行っていなかった。予定価格よりも有利な価格で契約する可能性を追求するためには、予決令第99条の6及び「公共随契にかかる売払価格の決定方法について」(事務連絡管総2第265号)に基づき、適切に見積合わせなどを行うことについて更に検討すべきであったと認められた。

なお、24年度から28年度までの間に近畿財務局及び6財務事務所等が締結した公共随契66件についてみたところ、見積合わせを行うことなく売払価格を提示したものが本件以外に1件見受けられた。

(注6) 正常価格 市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいう。



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