マルチ商法の取引停止リスク ― フォーデイズ取引停止命令をうけて | 法律ニュース部

[コラム]マルチ商法の取引停止リスク ― フォーデイズ取引停止命令をうけて

マルチ商法と法規制

規制 取引停止のリスク

マージン(「ボーナス」等と称する特定利益)を期待して加入したのに、突然、勧誘が出来なくなることがある。

特商法は、指名の提示や勧誘する旨の告知などを義務付け、不実告知などを禁止している。

違反があれば、大臣は業務停止の命令を出すことができる。そして、この命令に背いた場合の罰則も設けられている(三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金)。

(連鎖販売取引の停止等)
第三十九条 一項 主務大臣は、統括者が第三十三条の二、第三十四条第一項、第三項若しくは第四項、第三十五条、第三十六条、第三十六条の三(第五項を除く。)若しくは第三十七条の規定に違反し若しくは前条第一項各号に掲げる行為をした場合若しくは勧誘者第三十三条の二、第三十四条第一項、第三項若しくは第四項、第三十五条、第三十六条若しくは第三十六条の三(第五項を除く。)の規定に違反し若しくは前条第一項第二号から第四号までに掲げる行為をした場合において連鎖販売取引の公正及び連鎖販売取引の相手方の利益が著しく害されるおそれがあると認めるとき、又は統括者が同項の規定による指示に従わないときは、その統括者に対し、二年以内の期間を限り、当該連鎖販売業に係る連鎖販売取引について勧誘を行い若しくは勧誘者に行わせることを停止し、又はその行う連鎖販売取引の全部若しくは一部を停止すべきことを命ずることができる。この場合において、主務大臣は、その統括者が個人である場合にあつては、その者に対して、当該停止を命ずる期間と同一の期間を定めて、当該停止を命ずる範囲の連鎖販売取引に係る業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることの禁止を併せて命ずることができる。

フォーデイズの業務停止命令では、次の2点が認定された。


※公表資料による

処分の原因となる事実

勧誘者は、以下のとおり、法に違反する行為を行っており、連鎖販売取引の公正及び連鎖販売取引の相手方の利益が著しく害されるおそれがあると認められた。

(1)勧誘者は、遅くとも平成28年11月頃以降、同社の統括する一連の連鎖販売業に係る連鎖販売取引をしようとするときに、事前に連絡なく、その相手方の自宅を訪問し、「ちょっと、上がってもいいですか。」等と告げるのみで、その勧誘に先立って、同社の名称、特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をする目的である旨及び当該勧誘に係る本
件商品の種類を明らかにしていませんでした。(氏名等不明示)

(2)勧誘者は、遅くとも平成28年10月頃以降、本件連鎖販売契約の締結について勧誘をするに際し、本件商品にそのような効能がないにもかかわらず、「これを飲んだら目が治ります。」、「ガンが治った人もいる。」等と、本件商品を摂取することで病気の治療若しくは予防又は症状の改善ができるかのように、商品の効能について不実のことを告げていました。(不実告知(商品の効能))


このように、行政側は、証拠さえ揃えば、少ない事例だけでも、業務停止の命令を下すことができる。

フォーデイズの会員数は、35万人といわれている。これだけの人間が居れば、ついついルール違反する者が出てくるのは不思議ではない。

自分がルールを守るだけでは足りないという、困難な問題を抱えているのがマルチ商法である。

紀藤正樹弁護士がマトを捉えた発言をしている。「マルチ商法は、“原則違法”」「要は“基本的に違法だけど、特定の条件を満たした場合のみ合法に変わる”といった、厳しい規制の中で展開されているビジネスなんですよ。」出典元:「東幹久も応援中!? マルチ商法からネットワークビジネスへ移行するアムウェイは合法か? 違法か?」http://www.premiumcyzo.com/modules/member/2012/05/post_3310/

ビジネスの目で見ても、規制は参入回避のポイントになる。その上、この規制は、目的が消費者保護という大義がある。よく言われる「規制緩和」とは別の次元にある。

したがって、マルチ商法への参入は相当にリスクがあるのだ。

フォーデイズの対策

フォーデイズは、昨年8月に消費者庁から、「不実告知」「重要事項不告知」など4項目に違反しているとして改善指導を受け、コンプライアンス強化を図っていた。しかし、今年7月には立入検査が実施され、今回の業務停止命令に至る。

改善指導後

昨年、指導を受けた改善策として、75歳以上の人が新規登録する際は家族の同意書へのサインを必須とした。より解約しやすい環境を整備するため、16年12月には「ファーストサポートダイヤル」を新設し、新規登録者の相談窓口にした。フィールドのトレーニングを強化するため、(公社)日本訪問販売協会の「JDSA訪問販売員教育指導者資格」をツインディレクター以上に取得するよう促したり、コンプライアンス講習会を拡充してきた。

立入検査後

今年、立入検査後は、会員に対して今回の経緯説明と違反行為の撲滅、相談件数ゼロを目指すための対策について告知。7月14日にはフォーデイズの公式ウェブサイトに、和田社長からのメッセージ動画をアップ。ビジネスの中核を担う約2万1000人の「トレーナー」資格者に対し、消費者庁からの指導を受けた現状を明らかにするとともに、健全なビジネス活動への協力を訴えていた。

これらの対策を講ずるも、行政側には納得されず、今回の命令が出されたのだ。

なお、業務停止は1回だけとは限らない。問題のある企業は複数回命令を受けている。

11月にはジャパンライフが3度目の業務停止命令(特商法・不実告知)を受けた。3回もあり得るという先例も作られている。

そもそもマルチ商法とは

ねずみ講とは違い合法

マルチ商法(連鎖販売取引)は、ある販売組織の加入者が別の消費者に商品を売って組織に加入させてマージンを受け取り、さらにその消費者が別の消費者に商品を売って組織に加入させてマージンを受け取り、さらにその消費者が・・・というようなことを次々に行って組織をピラミッド式に拡大していく商法。

特定商取引に関する法律(特商法)33条で定義された合法の行為。

・物品の販売(または役務の提供など)の事業であって
・再販売、受託販売もしくは販売のあっせん(または役務の提供もしくはそのあっせん)をする者を特定利益が得られると誘引し
・特定負担を伴う取引(取引条件の変更を含む。)をするもの

第三十三条 
1項 この章並びに第五十八条の二十一第一項及び第三項並びに第六十七条第一項において「連鎖販売業」とは、物品(施設を利用し又は役務の提供を受ける権利を含む。以下この章及び第五章において同じ。)の販売(そのあつせんを含む。)又は有償で行う役務の提供(そのあつせんを含む。)の事業であつて、販売の目的物たる物品(以下この章及び第五十八条の二十一第一項第一号イにおいて「商品」という。)の再販売(販売の相手方が商品を買い受けて販売することをいう。以下同じ。)、受託販売(販売の委託を受けて商品を販売することをいう。以下同じ。)若しくは販売のあつせんをする者又は同種役務の提供(その役務と同一の種類の役務の提供をすることをいう。以下同じ。)若しくはその役務の提供のあつせんをする者を特定利益(その商品の再販売、受託販売若しくは販売のあつせんをする他の者又は同種役務の提供若しくはその役務の提供のあつせんをする他の者が提供する取引料その他の主務省令で定める要件に該当する利益の全部又は一部をいう。以下この章及び第五十八条の二十一第一項第四号において同じ。)を収受し得ることをもつて誘引し、その者と特定負担(その商品の購入若しくはその役務の対価の支払又は取引料の提供をいう。以下この章及び第五十八条の二十一第一項第四号において同じ。)を伴うその商品の販売若しくはそのあつせん又は同種役務の提供若しくはその役務の提供のあつせんに係る取引(その取引条件の変更を含む。以下「連鎖販売取引」という。)をするものをいう。

2項 この章並びに第五十八条の二十一、第六十六条第一項及び第六十七条第一項において「統括者」とは、連鎖販売業に係る商品に自己の商標を付し、若しくは連鎖販売業に係る役務の提供について自己の商号その他特定の表示を使用させ、連鎖販売取引に関する約款を定め、又は連鎖販売業を行う者の経営に関し継続的に指導を行う等一連の連鎖販売業を実質的に統括する者をいう。
3項 この章において「取引料」とは、取引料、加盟料、保証金その他いかなる名義をもつてするかを問わず、取引をするに際し、又は取引条件を変更するに際し提供される金品をいう。

一方、ねずみ講(無限連鎖講)は、無限連鎖講防止法で禁止されている犯罪行為。先に組織に加入したものが後に加入したものから金品を受け取ることを内容とする金品の配当組織として構成される。

代表的な仕組みは次の通り
① 一定金額を講本部や先輩会員に送金して講に加入する。
② 講に加入したら最低2名の新規会員を勧誘し、加入させなければならない。
③ 勧誘・加入させた自分の子会員に孫会員を勧誘・加入させる。

(定義)
第二条 この法律において「無限連鎖講」とは、金品(財産権を表彰する証券又は証書を含む。以下この条において同じ。)を出えんする加入者が無限に増加するものであるとして、先に加入した者が先順位者、以下これに連鎖して段階的に二以上の倍率をもつて増加する後続の加入者がそれぞれの段階に応じた後順位者となり、順次先順位者が後順位者の出えんする金品から自己の出えんした金品の価額又は数量を上回る価額又は数量の金品を受領することを内容とする金品の配当組織をいう。
(無限連鎖講の禁止)
第三条 何人も、無限連鎖講を開設し、若しくは運営し、無限連鎖講に加入し、若しくは加入することを勧誘し、又はこれらの行為を助長する行為をしてはならない。

両者の違い

・商品があるか無いか

・金品配当で稼ぐか商品流通で稼ぐか

※商材の価値が価格と大きくかけ離れているような場合、形式的に「連鎖販売取引」の形をとっていたとしても、無限連鎖講と判断されることがある。

マルチ商法の問題点

適切な組織運営を行えば事業を維持することが可能だが、誰でも簡単に利益を得られるわけではなく、本当に儲かるのは組織の上部にいる一部の人間になる。

売れない商品の在庫を大量に抱えることになったり、友人や知人を無理やり勧誘したために人間関係が悪化するなど問題も起こりやすい。

特商法が規制の対象としているのはこういった問題があるからである。

特商法は、業者と消費者の間における紛争が生じやすい取引について、勧誘行為の規制等、紛争を回避するための規制及びクーリング・オフ制度等の紛争解決手続を設けることによって、取引の公正性と消費者被害の防止を図る目的の法律。

マルチ商法については、昭和51年の制定当時から規制されているうえ、マルチ商法となる対象の拡大や、合法となる取引手法の縮小など改正も多くされてきた。常に問題を抱えた取引形態である。