大北森林組合補助金不正受給事件 知事や林務部幹部に損害賠償を求める住民訴訟へ

信濃毎日新聞は4日、大北森林組合補助金不正受給事件で、住民訴訟が提起される見通しだと報じた。


大北森林組合(大町市)の補助金不正受給事件で国が県に課した加算金約3億5300万円を巡り、「日本と信州の明日をひらく県民懇話会(県革新懇)」会員ら県民有志は3日、阿部守一知事や当時の県林務部幹部らに賠償を求める住民訴訟を15日に長野地裁に起こすことを決めた。県民有志は、同事件を巡り知事や林務部幹部にも賠償責任があるとして9月に住民監査請求したが、棄却されており、訴訟に踏み切る。……詳しくは↓
信濃毎日新聞「大北森林組合事件 県民有志 知事らに賠償求め15日提訴」http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20171204/KT171203FTI090001000.php


刑事訴訟

大北森林組合補助金不正受給事件の刑事訴訟では、長野地方裁判所が本年 3 月 28 日、大北森林組合元専務理事及び大北森林組合に対し有罪の判決を下している。

判決文抜粋

被告人においては、地域の森林整備をはかり、林業経営を安定化させるほか、被告組合の決算に際して高規格作業道の開設費用や組合運営費の赤字を埋めたいという動機があり、他方、地方事務所林務課では、作業道の整備を通じて森林の整備をはかるという使命を果たそうとはしていたものの、降雪期で補助金の対象となる工事や作業が不可能であるのに県林務部から執行未了の予算の消化を割り当てられ、本来は補助金の交付が許されない、工事や作業が完了していない事業について補助金を交付する「闇繰越」などとも呼んでいた違法な手段を使っても予算を消化するよう迫られていたなど、予算に見合った行政サービスの提供より、数値上の予算の消化が重視されていたという事情も認められる。
そうすると、本件では、本来、補助金の申請が適正であるか審査すべき立場にある地方事務所林務課職員が、予算の消化を迫られたことなどもあって、被告組合に対し、不正な補助金申請を始めるきっかけを与え、その後も、これを容認し続けていたことは明らかで、補助金を交付した長野県側において重大な落ち度があったというべきである。

監査請求

県革新懇は、知事や林務部幹部にも責任があるとし、損害を賠償させるよう県監査委員に住民監査請求していた。しかし、県監査委員は、職員に不適正な事務を迫った証拠は確認できず、知事は違法な状況を知る立場になかったとし、請求を棄却した。

監査請求は、以下の内容だった。

請求の要旨
(1)財務会計上の行為
① 大北森林組合補助金不正等(以下、本件という)に関し、長野県が国から課せられた加算金 353,045,434 円を支払ったこと。
② 当該加算金の支払につき、知事、関係した歴代林務部長及び本庁林務部幹部に対する損害賠償請求を怠っていること。
(2)財務会計上の不当性
本件に関し、知事、関係した歴代林務部長及び本庁林務部幹部が林務行政の適正な運営に務めていれば生じ得なかった、制裁金ともいえる加算金を県が国に支払い、以て県に損害を与えたこと。
(3)県に与えた損害
本件に関し、353,045,434 円の支出を為したこと。
(4)講ずべき措置
本件に関し、知事は、本件の真相の徹底解明のために中立な第三者委員会を設置するとともに、知事、関係した歴代林務部長及び本庁林務部幹部に対し、損害賠償を請求すること

監査請求前置主義

住民訴訟は監査請求を前提としている。

地方自治法

第二百四十二条
  1. 普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)と認めるとき、又は違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)があると認めるときは、これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によつて当該普通地方公共団体のこうむつた損害を補填するために必要な措置を講ずべきことを請求することができる。
  2. 前項の規定による請求は、当該行為のあつた日又は終わつた日から一年を経過したときは、これをすることができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
  3. 第一項の規定による請求があつた場合において、当該行為が違法であると思料するに足りる相当な理由があり、当該行為により当該普通地方公共団体に生ずる回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、当該行為を停止することによつて人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがないと認めるときは、監査委員は、当該普通地方公共団体の長その他の執行機関又は職員に対し、理由を付して次項の手続が終了するまでの間当該行為を停止すべきことを勧告することができる。この場合においては、監査委員は、当該勧告の内容を第一項の規定による請求人(以下本条において「請求人」という。)に通知し、かつ、これを公表しなければならない。
  4. 第一項の規定による請求があつた場合においては、監査委員は、監査を行い、請求に理由がないと認めるときは、理由を付してその旨を書面により請求人に通知するとともに、これを公表し、請求に理由があると認めるときは、当該普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関又は職員に対し期間を示して必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、当該勧告の内容を請求人に通知し、かつ、これを公表しなければならない。
  5. 前項の規定による監査委員の監査及び勧告は、第一項の規定による請求があつた日から六十日以内にこれを行なわなければならない。
  6. 監査委員は、第四項の規定による監査を行うに当たつては、請求人に証拠の提出及び陳述の機会を与えなければならない。
  7. 監査委員は、前項の規定による陳述の聴取を行う場合又は関係のある当該普通地方公共団体の長その他の執行機関若しくは職員の陳述の聴取を行う場合において、必要があると認めるときは、関係のある当該普通地方公共団体の長その他の執行機関若しくは職員又は請求人を立ち会わせることができる。
  8. 第三項の規定による勧告並びに第四項の規定による監査及び勧告についての決定は、監査委員の合議によるものとする。
  9. 第四項の規定による監査委員の勧告があつたときは、当該勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員は、当該勧告に示された期間内に必要な措置を講ずるとともに、その旨を監査委員に通知しなければならない。この場合においては、監査委員は、当該通知に係る事項を請求人に通知し、かつ、これを公表しなければならない。

第二百四十二条の二

  1. 普通地方公共団体の住民は、前条第一項の規定による請求をした場合において、同条第四項の規定による監査委員の監査の結果若しくは勧告若しくは同条第九項の規定による普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関若しくは職員の措置不服があるとき、又は監査委員が同条第四項の規定による監査若しくは勧告を同条第五項の期間内に行わないとき、若しくは議会、長その他の執行機関若しくは職員が同条第九項の規定による措置を講じないときは、裁判所に対し、同条第一項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもつて次に掲げる請求をすることができる。
    一  当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求
    二  行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求
    三  当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求
    四  当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求。ただし、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方が第二百四十三条の二第三項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合にあつては、当該賠償の命令をすることを求める請求
  2. 前項の規定による訴訟は、次の各号に掲げる期間内に提起しなければならない。
    一  監査委員の監査の結果又は勧告に不服がある場合は、当該監査の結果又は当該勧告の内容の通知があつた日から三十日以内
    二  監査委員の勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員の措置に不服がある場合は、当該措置に係る監査委員の通知があつた日から三十日以内
    三  監査委員が請求をした日から六十日を経過しても監査又は勧告を行なわない場合は、当該六十日を経過した日から三十日以内
    四  監査委員の勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員が措置を講じない場合は、当該勧告に示された期間を経過した日から三十日以内
  3. 前項の期間は、不変期間とする。
  4. 第一項の規定による訴訟が係属しているときは、当該普通地方公共団体の他の住民は、別訴をもつて同一の請求をすることができない。
  5. 第一項の規定による訴訟は、当該普通地方公共団体の事務所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
  6. 第一項第一号の規定による請求に基づく差止めは、当該行為を差し止めることによつて人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがあるときは、することができない。
  7. 第一項第四号の規定による訴訟が提起された場合には、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実の相手方に対して、当該普通地方公共団体の執行機関又は職員は、遅滞なく、その訴訟の告知をしなければならない。
  8. 前項の訴訟告知は、当該訴訟に係る損害賠償又は不当利得返還の請求権の時効の中断に関しては、民法第百四十七条第一号 の請求とみなす。
  9. 第七項の訴訟告知は、第一項第四号の規定による訴訟が終了した日から六月以内に裁判上の請求、破産手続参加、仮差押若しくは仮処分又は第二百三十一条に規定する納入の通知をしなければ時効中断の効力を生じない。
  10. 第一項に規定する違法な行為又は怠る事実については、民事保全法 (平成元年法律第九十一号)に規定する仮処分をすることができない。
  11. 第二項から前項までに定めるもののほか、第一項の規定による訴訟については、行政事件訴訟法第四十三条 の規定の適用があるものとする。
  12. 第一項の規定による訴訟を提起した者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合において、弁護士又は弁護士法人に報酬を支払うべきときは、当該普通地方公共団体に対し、その報酬額の範囲内で相当と認められる額の支払を請求することができる。

(訴訟の提起)

第二百四十二条の三
  1. 前条第一項第四号本文の規定による訴訟について、損害賠償又は不当利得返還の請求を命ずる判決が確定した場合においては、普通地方公共団体の長は、当該判決が確定した日から六十日以内の日を期限として、当該請求に係る損害賠償金又は不当利得の返還金の支払を請求しなければならない。
  2. 前項に規定する場合において、当該判決が確定した日から六十日以内に当該請求に係る損害賠償金又は不当利得による返還金が支払われないときは、当該普通地方公共団体は、当該損害賠償又は不当利得返還の請求を目的とする訴訟を提起しなければならない。
  3. 前項の訴訟の提起については、第九十六条第一項第十二号の規定にかかわらず、当該普通地方公共団体の議会の議決を要しない。
  4. 前条第一項第四号本文の規定による訴訟の裁判が同条第七項の訴訟告知を受けた者に対してもその効力を有するときは、当該訴訟の裁判は、当該普通地方公共団体と当該訴訟告知を受けた者との間においてもその効力を有する。
  5. 前条第一項第四号本文の規定による訴訟について、普通地方公共団体の執行機関又は職員に損害賠償又は不当利得返還の請求を命ずる判決が確定した場合において、当該普通地方公共団体がその長に対し当該損害賠償又は不当利得返還の請求を目的とする訴訟を提起するときは、当該訴訟については、代表監査委員が当該普通地方公共団体を代表する。