【受刑者の選挙権制限】元受刑者訴え棄却 ― 広島高裁【違憲の訴え】

広島高裁 公選法11条の違憲性認めず

受刑者の選挙権を認めない公選法11条の規定は憲法違反だとして、広島刑務所に服役していた岡山県の元受刑者の50代男性が、国政選挙で投票できる地位の確認と120万円の損害賠償を国に求めた訴訟。

控訴審判決が20日、広島高裁であり、一審に続き、男性の請求を退けた。

公選法11条 国政と地方の選挙について、「選挙権及び被選挙権を有しない者」として、「禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者」(受刑者)や「選挙、投票及び国民審査に関する犯罪により禁錮以上の刑に処せられその刑の執行猶予中の者」と定めている。いずれも確定前なら勾留中でも不在者投票が可能。選挙関係以外の犯罪なら執行猶予中も制限はない。成年後見人がついている人にも制限規定があったが、東京地裁が3月に違憲判断を示したため、これを削除する改正公選法が5月に成立した。

一審判決

広島地裁は昨年7月、「受刑者は法秩序に著しく違反しており、選挙人としての適格性が疑われる」と指摘。選挙権を制限する公選法の規定に一定の正当性、合理性があると判断した。

平成25年の判決

受刑者の選挙権制限に関する違憲訴訟は平成25年の判決から本格化した。高裁判決が確定したため最高裁判断までは行かなかったが、画期的な判決で注目を受けた。

大阪の事件

大阪高判H25・9・27

原告の元受刑者は公職選挙法11条は憲法違反だと主張し、2010年7月の参院選で投票できずに精神的苦痛を受けたとして国賠を請求。

判決

判決は「選挙権を一律に制限することがやむを得ないとは言えない」と違憲の指摘したが、請求自体は棄却。

違憲理由1「受刑者であることのみから、ただちに法を守る意識が著しく欠けるとはいえない
違憲理由2「憲法改正の国民投票は受刑者にも認められている為、不在者投票で選挙権を行使させることは実務上難しい事ではない」

(前回・次回選挙の投票の地位の確認請求もしていたが既に刑期を終えたので不適法却下)

東京の事件

東京高H25・12・9

受刑者の選挙権を認めない公職選挙法11条は憲法違反だとして、東京の弁護士が2010年7月参院選の比例代表選挙の無効を求めた。

判決

判決は「規定は憲法に違反しない」と判断を示し、原告の請求を棄却。

合憲理由「公選法の規定は有罪判決で禁錮以上の刑を科せられた者への制裁の一つで、合理的な理由がある。国会の裁量の範囲は逸脱していない

両事件の違い

訴訟類型

国賠と民衆訴訟

公職選挙法11条の判断が分かれた

東京高裁は、裁量権についての言い回しから、「裁量強調型」の論証(小選挙区制平成11年合憲最判・参院定数訴訟平成16年合憲判決補足意見と同じ系統)。

他方、大阪高裁は「裁量限定型」(国籍法平成20年違憲最判、民法900条平成7年合憲最判反対意見)の論証。つまり、法の下の平等による、制度形成の憲法上の限界を強調する。