全国健康保険協会 ビキニ被ばくで元船員らの「労災」認めず ― 加藤厚労相は不干渉の態度を示す

1954年に太平洋・ビキニ環礁付近で米国が実施した水爆実験で被ばくし、健康被害に遭ったとして、高知県内の元船員らが、全国健康保険協会に事実上の「労災認定」(船員保険)を求めた集団申請に対し、同協会は25日までに認定しないことを決めた。

(参照:[12月25日]毎日新聞「ビキニ被ばく 健保協会、労災認定せず 高知の元船員ら」https://mainichi.jp/articles/20171226/k00/00m/040/105000c

事件の経緯

政府はビキニ環礁付近での被災状況について資料の存在を否定し、隠し続けていた。

国会でも1986年3月、野党側の求めに対して、政府側は「資料はない」「第五福竜丸以外の漁船については、その実態、数字についてはつかんでいない」と回答していた。

しかし、アメリカが近年公開した文書で、第五福竜丸以外の漁船についてもビキニ被ばく関係があることが判明した。厚生労働省も2014年にようやく文書を開示するに至った。

大臣会見

全国健康保険協会が認定しなかったことについて加藤勝信厚労相は26日、本年最後の定例会見で、明言を避けた。

(記者)

ビキニの水爆実験の関係でお伺いします。高知県などの元船員の方々が協会けんぽに事実上の労災にあたる船員保険の適用を申請しており、それに対して協会けんぽの方で適用しないという結論を出したと承知しております。それに対して、元船員側からは検証が不十分なのではないかという批判も出ております。これについての大臣の御意見をお願いします

(大臣)

昭和29年の米国による水爆実験時に、ビキニ環礁周辺で操業していた漁船員の方が、被爆による健康被害を理由に平成28年から29年にかけて協会けんぽへ旧船員保険法に基づく労災請求を行ったものと承知しております。本件については保険者である協会けんぽが請求傷病と放射線との因果関係を調査するため、有識者会議を設置して、その有識者会議における議論の結果を踏まえて、判断がなされるものと承知しております

(記者)

ビキニの労災保険の適用の関係でお伺いしますが、検証が十分であったかどうかという点について大臣はどうお考えかということと、船員の方の声としてもう一度再審査の請求という声もありますが、もしそのような動きがあった場合はどのように対応されるか、教えて下さい。

(大臣)

まず、この結果については直接ご本人に行くことが前提になっておりますので、現段階で行ったかどうか私も確認出来ていないので、どういう結果があったということを前提にお答えするのは控えてさせていただきたいと思います。いずれにしても、協会けんぽで手続きを踏んで、また外部の有識者との会議を行って結果を出されたと承知しております。また、これから更なる審査請求について制度があるわけでありますが、そこは審査されている方のご判断によるのだろうと思います

※全国健康保険協会の処分が不服で、審査請求をする場合、その請求先は「社会保険審査官」となる。これは、厚生労働省職員の中から厚生労働大臣によって任命されるが、「審査の決定は、審査官がその名において独立してこれを行う」こととされているので、黄色下線部の大臣の発言は正当である。

問題

本件は、船員保険による職務上給付という形でしか申請できず、船員保険で通常求められる「職務遂行性」や「職務起因性」の要件を満たす必要がある。

これらの検討にあたり、有識者会議は、古いデータを基に推論するしかなかった。(報告書PDFファイルhttps://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/senpo/new/g7/201712251/201712251.pdf


ビキニ被ばくを巡っては、元船員や遺族ら45人が慰謝料など計約6500万円を求めた国家賠償請求訴訟も行われている。次回弁論(来年2月16日)で、結審する見通し。

B型肝炎訴訟のように、国に裁判で負けるまでは(B型肝炎訴訟は原告勝訴的な和解)、動かないのだろうか。(B型肝炎については特別措置法による給付金が作られた。)