【在特会元幹部のヘイトスピーチ】京都地検、侮辱罪より重い名誉毀損罪で立件

ヘイトスピーチで名誉毀損

これまで、ヘイトスピーチを巡る事件では、差別的な発言が在日コリアンに対する「悪口」という幅広いとらえ方をして侮辱罪が適用されてきた。

しかし、京都地検は23日までに、「在日特権を許さない市民の会(在特会)」元幹部に対し、侮辱罪より罪の重い名誉毀損罪での立件に踏み切った。

本件は、元幹部は昨年4月、京都市南区にあった京都朝鮮第一初級学校跡の近くで拡声器を使い、市民に向けて「残党が皆様の子どもたちを拉致したろかなと狙っているかもしれません」などと発言した、というもの。

京都朝鮮第一初級学校に関連するヘイトスピーチ

在特会などは2009~10年、京都市南区にあった京都朝鮮第一初級学校のそばなどで「日本からたたき出せ」「スパイの子ども」などと拡声器で連呼し、動画をインターネットで公開した。街宣では在特会のメンバー4人が威力業務妨害罪や侮辱罪などで有罪が確定した。

賠償と同校への街宣活動の禁止を命じた民事訴訟の京都地裁判決(2013年)は在特会の街宣を人種差別行為と断じ、表現の悪質さを強く非難した。16年6月施行のヘイトスピーチ対策法に合わせ、警察庁は通達で各都道府県警に対し、違法行為には「厳正な対処」を求めていた。

侮辱罪と名誉毀損罪

侮辱罪(刑法231条)は、「事実を摘示しないで」「公然と」、「人を侮辱した」場合に成立。

名誉毀損罪(刑法230条)は、「事実の摘示によって」「公然と」「人の社会的評価を低下させるおそれのある行為をした」ことによって成立。

大きな分岐点「事実の摘示」

事実を摘示したかどうかによって名誉毀損罪か侮辱罪かが区別され、摘示がなければ侮辱罪、あれば名誉毀損罪となる。

そして、名誉毀損が成立するために必要な「事実」は、「真実」である必要はなく、嘘や虚偽の「事実」でも良い。 ※教科書事例としては、根も葉もなく「不倫をしてる」と言うのは名誉毀損。

つまり、アホやバカなどという発言だけでは、事実とはならないので、名誉毀損の構成要件を満たさない。従来のヘイトスピーチ事件では、ヘイトスピーチをこのような発言と同等のものとして捉えられていた。
 また、被害者の氏名を明確に挙示しなかったとしても、その他の事情を総合して何人であるかを察知しうるものである限り、名誉毀損罪として処断するのを妨げない(最判昭和28年12月15日)。

名誉毀損罪の客体

「人の名誉」。この場合の人とは、「自然人」だけではなく、「法人」「法人格の無い団体」なども含まれる(大判大正15年3月24日刑集5巻117頁)。

ただし、「アメリカ人」や「東京人」など、特定しきれない漠然とした集団については含まれない(大判大正15年3月24日刑集5巻117頁)。

ヘイトスピーチ対策法

本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(平成28年6月3日法律第68号)

在日韓国・朝鮮人らに向けたヘイトスピーチを念頭に、適法に日本に住む日本以外の出身者や子孫に対する不当な差別的言動は許されないとし、差別的言動について「差別意識を助長する目的で、公然と危害を加える旨を告知したり、著しく侮蔑したりして地域社会から排除することを扇動するもの」と定義。国が相談体制の整備や教育、啓発活動の充実に取り組むことを責務と定め、地方自治体にも同様の対策に努めるよう求める。

禁止規定や罰則規定は設けられていない。

※野党(民進など)は禁止も定めるよう求めたが、憲法21条の表現の自由などを理由に与党(自民・公明)は拒否。同法附則で「差別的言動の実態を勘案し、検討を加える」と記すに留まった。



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